大阪でのスタートアップ:始めに
会計と税金
1. 法人の税金の種類及び税率
法人の税金は、大きく国税と地方税に分類されます。地方とは、都道府県・市町村です。
一般的な法人に課される税金のうち、代表的なものは以下の通りです。
⇒国に納める税:法人税、地方法人税、消費税、所得税(源泉所得税)
⇒地方自治体に納める税:住民税、事業税、地方特別法人税、固定資産税、事業所税
(1) 法人税
法人の所得に対して課される国税です。子会社でも支店(外国法人)でも、基本的に計算方法は同じです。
- 計算方法: 損益計算書の当期純利益を基に、税務上の調整*を行って算出した課税所得に、下記②の税率を乗じて税額を計算します。(*交際費の損金不算入、役員賞与の損金不算入など)
- 税率: 23.2%(平成30年4月1日以後開始事業年度)
- 申告・納付
a) 確定申告: (原則)決算日から2ヶ月以内 (特例)監査などにより2ヶ月以内に決算が確定しない場合は、あらかじめ届出をすることにより、3ヶ月まで延長可能です。申告期限を延長した場合でも納付期限は延長されないため、2か月以内に納付しなければ利子税が課されます。
b) 中間申告: 前年度の税額を基に計算した6ヶ月分の税額が10万円超になる場合には中間申告が必要です。事業年度の開始6ヶ月後から2ヶ月以内に申告及び納税を行います。
ただし、資本金1億円以下の中小法人(資本金5億円以上の大法人の100%子会社等を除く)の課税所得のうち800万円以下の部分については、現在は特別に15%(本則は19%)となっています。
(2) 地方法人税
法人税の納税義務のある法人は、地方法人税の納税義務者となります。地方法人税の課税対象となる事業年度は、法人の各事業年度とされています。なお、課税標準は各事業年度の法人税額に一定の調整を加えたものとされており、税率は10.3%となります。地方法人税確定申告書を各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に提出する必要があります。
(3) 消費税
課税事業者になった場合、受取った消費税と支払った消費税の差額を申告・納付します。課税事業者でなければ、申告・納付は必要ありません。課税事業者に該当するかどうかは、原則として2期前の課税売上高が1千万円を超えているか等により判定されます。新設法人の場合、設立時の資本金が1千万円未満で、かつ一定の要件を満たしていれば、当初は免税事業者となります。課税事業者の判定につきましては、要件が複雑ですので税務専門家にご相談下さい。
- 計算方法:
納付する消費税等の額=仮受消費税- 仮払消費税*
・仮受消費税:売上や資産売却に伴って会社が預かった消費税等
・仮払消費税:仕入や経費支出に伴って支払った消費税等及び輸入時に税関へ支払った消費 税等
(*仮払消費税を全額控除できない場合がありますのでご注意下さい) - 税率: 標準税率 10%(国税7.8%、地方税2.2%)
軽減税率 8%(国税6.24%、地方税1.76%) - 申告・納付
a) 確定申告: 決算日から2ヶ月以内 (延長制度はありません)
b) 中間申告: 前事業年度の税額が48万円(国税のみ)を超える場合、以下に掲げる金額の区分に応じ、それぞれに掲げる期間の末日から2ヶ月以内に中間申告が必要です。
48万円超400万円以下:期首から6ヶ月
400万円超4千8百万円以下:期首から3ヶ月ごと(最後の期間を除く)
4千8百万円超:毎月(最後の月を除く)
(4) 内国法人に係る源泉所得税(源泉徴収)
法人が給与や報酬料金など一定の支払いを行う場合は、その支払の際、支払い金額から所得税を天引き(源泉徴収)し、国に納付する義務があります。源泉所得税は、支払法人に源泉徴収義務が課されており、源泉徴収や納付を怠ると不納付加算税や延滞税などの罰則がありますので注意が必要です。(非居住者・外国法人に対する支払いに係る源泉税については取扱いが異なりますので、税務専門家にご相談下さい)
なお、平成25年1月から25年間は、復興特別所得税額(源泉徴収すべき所得税の額の2.1%相当額)を併せて徴収する必要があります。
- 対象となる支払い
イ)給与、賞与、退職金など
ロ)弁護士、税理士などの報酬
ハ)原稿料、講演料など
ニ)配当
ホ)その他 - 納付
(1)の支払いを行った月の翌月10日まで - 納期の特例
給与の支給人員が10人未満の場合は、イ)とロ)にかかる所得税の納付については届出により年2回(7月・1月)とすることができます。
(5) 住民税
都道府県および市町村から課税される税金です。都道府県と市町村にそれぞれ申告が必要です。
- 計算方法
法人税割と均等割の合計額です。 - 税率
a) 法人税割: 法人税額に16.1%を乗じた額(資本金1億円以下で法人税額1千万円以下の場合は12.9%)※令和元年10月1日以後に開始する事業年度からは法人税額に10.2%を乗じた額(資本金1億円以下で法人税額年2千万円以下の場合は7%)
b) 均等割: 資本金等と従業員数によって税額が決定する(7万円~380万円)ので、赤字法人でも課税されます。例えば大阪市に所在する資本金等*が1千万円以下で従業員50人以下の会社の場合、大阪府税が2万円、大阪市税が5万円です。 (*日本支店の場合、海外本店の資本金等で判定します) - 申告・納付: 法人税と同じです。
(6) 事業税
法人が行う事業に対して課される都道府県の税です。外形標準課税が適用される場合と、所得のみを課税標準とする場合があります。
- 外形標準課税
(1) 計算方法
資本金1億円超の法人(日本支店の場合、海外本店の資本金で判定します)が対象です。 法人税の課税所得に基づく所得割額、資本金等の額に基づく資本割額及び付加価値割額を合計します。
(2) 税率
税率一覧参照 - 外形標準課税の対象とならない法人
税率一覧参照
(7) 特別法人事業税
事業税の申告納付義務のある法人が対象となります。国税ですが、地方税である事業税を基に計算し、都道府県に納付します。
※令和元年10月1日以後に開始する事業年度から地方法人特別税が廃止され、特別法人事業税が適用されます。
(8) 固定資産税
法人が所有する有形固定資産(土地、建物、償却資産)に対して市町村より課される税金です。
不動産(土地・建物)については登記内容を基に市町村から自動的に納付書が届きますが(賦課課税方式)、それ以外の資産は申告が必要です。
償却資産にかかる固定資産税(償却資産申告)
- 標準税率: 1.4%
- 申告および納付:
毎年1月1日現在で所有する償却資産(器具備品、内装設備など)の明細を1月31日までに市町村に申告します。税額は市町村で計算され、納付は最大4回/年です。 - その他
固定資産税には免税点があり、以下のとおりです。
同一市町村内に存在する資産の評価計算額が、それぞれ土地30万円、建物20万円、償却資産150万円未満であれば固定資産税はかかりません。
(9) 事業所税
大規模な事業所(オフィス、ホテル、倉庫など)を所有している法人に課される税です。大阪市など、一定の市町村に事業所がある場合に申告が必要です。
- 対象法人:その事業所の床面積の合計が1,000m²超、またはその事業所における従業者数の合計が100人超の法人(※)
- 税率
a) 資産割:床面積m²×600円
b) 従業者割:給与総額×0.25% - 申告・納付
決算日から2か月以内
(※) 事業所の床面積の合計が800m²超1,000m²以下の場合、又は、従業者数の合計が80人超100人以下の場合、税額は発生しませんが、事業所税申告書を提出する必要があります。
税率一覧
法人の所得にかかる税率 (資本金1億円以下の法人)
令和元年10月1日以降に開始する事業年度に適用
課税所得区分 | 年400万円以下の所得 | 年400万円を超え 年800万円以下の所得 |
年800万円を超える所得 |
---|---|---|---|
法人税 | 15.00% | 15.00% | 23.20% |
地方法人税 | 1.54% | 1.54% | 2.38% |
住民税 | 1.05% | 1.05% | 1.62% |
事業税(外形標準課税以外) | 3.5% | 5.3% | 7.00% |
地方法人特別税 | 1.29% | 1.96% | 2.59% |
合計税率 | 22.38% | 24.85% | 36.79% |
実行税率 | 21.35% | 23.16% | 33.57% |
※ただし、下記を条件とします。
- 資本金額もしくは出資金額が5億円以上の大法人の子会社である、資本金1億円以下の中小法人等を除く
- 大阪市内に所在する、法人税年額が2,000万円以下の法人
- 年間の所得金額が5,000万円以下の法人
- 2箇所以下の都道府県に事務所・事業所が所在する法人
住民税均等割額
法人税の区分 | 従業者数の合計 | 大阪府 | 大阪市 | 計 |
---|---|---|---|---|
50億円超 | 50人超 | 160万円 | 300万円 | 460万円 |
50億円超 | 50人以下 | 160万円 | 41万円 | 201万円 |
10億円超~50億円以下 | 50人超 | 108万円 | 175万円 | 283万円 |
10億円超~50億円以下 | 50人以下 | 108万円 | 41万円 | 149万円 |
1億円超~10億円以下 | 50人超 | 26万円 | 40万円 | 66万円 |
50人以下 | 26万円 | 16万円 | 42万円 | |
1千万円超~1億円以下 | 50人超 | 7.5万円 | 15万円 | 22.5万円 |
50人以下 | 7.5万円 | 13万円 | 20.5万円 | |
1千万円以下 | 50人超 | 2万円 | 12万円 | 14万円 |
50人以下 | 2万円 | 5万円 | 7万円 |
外形標準課税
令和元年10月1日以降開始事業年度 | |||
---|---|---|---|
超過税率 | 標準税率 | ||
所得割 | 年400万円以下の所得 | 0.495% | 0.400% |
年400万円を超え 年800万円以下の所得 | 0.835% | 0.700% | |
年800万円を超える所得 | 1.180% | 1.000% | |
付加価値割 | 1.260% | - | |
資本割 | 0.525% | - | |
特別法人事業税 | 標準税率で計算した所得割の260% |
※税率は各都道府県ごとに確認する必要があります。
2. 移転価格税制とは
法人が、国外関連者との間で資産の販売等や役務の提供等その他の取引を行った場合に、その取引で支払を受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は支払う対価の額が独立企業間価格を超えるとき、その国外関連取引は独立企業間価格で行われたものとみなして税額計算を行うという制度です。
移転価格税制とは、法人が海外にある関連会社【国外関連者】との取引を利用して所得を海外に移転することを防止するための制度です。例えば、グループ企業では、税率が低い国にある関連会社への製品の輸出価格を低くすることにより、本来日本で課税されるべき所得を海外の関連会社に移転させ、グループ全体の税金を少なくすることができます。
移転価格税制は、こうしたグループ間で設定した価格について、適正な価格【独立企業間価格】で取引したものと仮定して課税するものです。
(1) 国外関連者とは?
この制度の対象となるのは国外関連者間の取引です。国外関連者とは、具体的には次のような法人をいいます。
- 外国法人のうち、基本的に50%以上の持株関係がある法人
- 持株関係が50%未満でも、実質的な支配関係(役員関係・取引依存関係・資金関係)にある法人
(2) 独立企業間価格とは?
独立企業間価格の算定方法には(1)独立価格比準法、(2)再販売価格基準法、(3)原価基準法、の三つの方法があり、【基本三法】と呼ばれます。基本三法が使えない場合は基本三法に準ずる方法や利益分割法(PS法)、取引単位営業利益法(TNMM法)などの方法で算定します。なお、独立企業間価格の算定方法に優先順位はなく、国外関連取引に最も適合する方法が適用されます(ベストメソッドルール)。
(3) 移転価格文書化ルールの改正について
- 「最終親会社等届出事項」、「国別報告事項」及び「事業概況報告事項」
税源浸食及び所得移転(Base Erosion and Profit Shifting : BEPS)を巡るOECDでの議論を受け、平成28年度税制改正により、従来の移転価格文書(ローカルファイル)に加え、一定の要件を満たす多国籍企業グループ(特定多国籍企業グループ)について、新たに「最終親会社等届出事項」、「国別報告事項」及び「事業概況報告事項」の提出が義務付けられることとなり、これらはいずれも平成28年4月1日以後に開始する最終親会社の会計年度から適用開始となりました。これらの書類に係る各種の要件は下表の通りです。
「最終親会社等届出事項」、「国別報告事項」及び「事業概況報告事項」の要件最終親会社等届出事項 国別報告事項 事業概況報告事項 提出義務 特定多国籍企業グループの直前会計年度における連結総収入金額が1,000億円以上の場合に提出義務が課される。 提出者 特定多国籍企業グループに所属する日本の法人(日本におけるPEを含む) 原則として特定多国籍グループの最終親会社である内国法人 特定多国籍企業グループ所属する日本の法人(日本におけるPEを含む) 記載事項 最終親会社等の名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号、代表者の氏名 特定多国籍企業グループの構成企業の売上高、納税額、従業員数等の定量情報 特定多国籍企業グループの組織構造、事業の概要、財務状況等の定性情報 提出期限 最終親会社会計事業年度の終了の日まで(e-Tax) 特定多国籍グループの最終親会社の事業年度終了の日の翌日から一年以内(e-Tax) 使用言語 ― 英語 日本語又は英語 罰則 ― 30万円以下の罰金 30万円以下の罰金 - ローカルファイル
従来の移転価格文書に相当する文書(ローカルファイル)については、平成29年4月1日以降に開始する事業年度から一定の免除要件を満たす法人を除き、その事業年度の確定申告書提出期限までにローカルファイルを作成すること(同時文書化)が義務付けられることとなりました。同時文書化が免除される場合とは、前事業年度(前事業年度が無い場合にはその事業年度)における一の国外関連者との国外関連取引に係る対価の額が受払総額で50億円未満、かつ、その一の国外関連者との無形資産に係る国外関連取引に係る対価の額が受払総額で3億円未満の場合におけるその一の国外関連者との国外関連取引となります。なお、この場合でもローカルファイルの作成そのものが免除されるわけではなく、税務職員が設定する一定の期間内にローカルファイルに相当する書類を提出しなければ、推定課税や同業法人調査が行われることとなります。
3. 支店に対する課税方式の変更
平成28年4月1日以後開始事業年度から、外国法人の日本支店に対する課税方式が従来の総合主義から帰属主義へと変更されました。従来の総合主義の下では、日本に支店が存在していれば、外国法人が日本で稼得する所得がその支店に帰属しているかに関わらず、日本国内で生じたすべての所得がその支店の所得として吸引され、支店が合算して申告することとされていました。帰属主義では、このような考え方ではなく、外国法人が日本で稼得した所得であっても、その支店に帰属する所得(恒久的施設帰属所得)のみがその支店の所得として申告の対象となります。一方で、本店等が不動産賃貸所得や人的役務提供事業の対価を直接に稼得する場合には、それらの所得は本店等に帰属することとなり、その本店等がそれらの所得の納税義務を負うこととなります。その他、本店等が直接に利子、配当、使用料その他の投資関連所得を稼得する場合には、源泉徴収のみで課税関係が終了することとなります。
支店に帰属する所得が国内源泉所得とされることとなったことに伴い、支店が日本国外で稼得した所得も、その所得が支店に帰属すれば恒久的施設帰属所得として日本での申告の対象となります。このように、支店が日本以外の国で稼得した所得も日本の課税対象とされることとなったことから、支店においても外国税額控除を行うことにより二重課税の排除ができるようになります。
恒久的施設帰属所得の算定に当たっては、Authorized OECD Approach (AOA)が採用されました。AOAの下では、支店が行う取引を外部取引と内部取引に区分し、内部取引についても原則として第三者との取引と同様に売上や費用を認識して支店の所得計算に反映させます。この場合における取引価格の設定については、移転価格税制と同様の方法によりその妥当性が検証されることとなります。なお、本店等の所在地国と日本との間の租税条約が旧モデル租税条約7条に基づくものである場合には、内部取引のうち内部使用料を認識しないなど恒久的施設帰属所得の計算につき一定の調整が行われます。
また、支店が行う外部取引、内部取引、果たす機能、使用する資産、負担するリスクなどを記載したドキュメンテーションを準備し、税務当局の求めに応じて提出できるように準備しておくことが義務付けられました。
帰属主義の導入により、法人格が同一の本店と支店を、別々の法人である親会社と子会社に見立てて課税権を配分することになるため、税務上の見地からは、子会社形態での進出と支店形態での進出との間の差異が以前よりも小さくなることになります。
4.会社の形態による違い
課税範囲の違い(平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用)
支 店 | 子 会 社(株式会社及び合同会社など) | |
---|---|---|
税務上の区分 | ・外国法人 | ・内国法人 |
課税対象所得 | ・支店に帰属する所得について課税 (二重課税を避けるため外国税額控除の制度あり) |
・日本だけでなく、海外で生じた所得についても課税 (二重課税を避けるため外国税額控除の制度あり) |
欠損の場合 | ・基本的に住民税均等割のみ課税。海外本店の資本金が1億円を超える場合は、これ以外に事業税の外形標準課税が適用される。 | ・基本的に住民税均等割のみ課税。子会社の資本金が1億円を超える場合は、これ以外に事業税の外形標準課税が適用される。 |
借入 | ・本支店間の資金の貸し借りであっても貸付金/借入金となるため、利息の認識が必要 (事業会社に関し租税条約による修正あり)。 ・上記に関し、旧モデル租税条約7条型の租税条約締結国の本店等との資金の貸し借りについては従来通り(利息は税務上収益/費用にならない)。 ・日本支店での借入利息の損金算入につき、限度額が定められている。 ・本支店間の資金の貸付/借入に関して契約書類似の書類を作成・保存する必要がある。 |
・親子会社間であっても、契約書の作成が必要 ・適正な利息の支払が必要 ・支払利息は原則として費用にできるが、過少資本税制に注意する。 ・利息の支払いの際、源泉徴収をする必要あり(租税条約確認) |
その他 資金移動 |
・本店等から日本支店への資本金の送金又は日本支店から本店への剰余金の送金は資本等取引に該当するため、税務上の収益/費用とならない。 ・資金の移動がどのような取引に該当するのかについて契約書類似の書類を作成・保存する必要がある。 |
・親子間での資金移動は、配当、借入金の返済、利息の支払、使用料、買掛/資産購入代金の支払など、請求書や契約書での確認が必要である。配当など源泉徴収の適用があるものがあり注意が必要。(租税条約確認) ・子会社の余剰資金を親会社へ送金する場合は、子会社から親会社への貸付と認定され、子会社で受取利息の計上が必要になる。 |
本社(親会社) で生じた費用 |
・支店で負担すべきものは支店へ配賦できる(合理的な基準による)。ただし、後日の税務調査に備えて必ず配賦計算の根拠資料をそろえること。また本店の決算書は申告書に必ず添付しなければならない。 | ・別会社であり、配賦という考え方はない。(子会社の費用を負担した場合、請求書などにより請求を行い、代金決済を行う必要がある。) |
源泉徴収 | ・本支店間での利息、使用料、配当等の支払いに関して源泉徴収の必要なし。 | 上記各説明参照。 |
税率 | 会社形態による税率の差はなし。 | |
メリット デメリット |
<メリット> ・支店の代表者は一定の要件を満たしていれば、基本的に法人税法で役員とみなされないため、子会社の役員と異なり、賞与等も税務上で経費とすることが可能。 <デメリット> ・法人税の申告書に海外本店の決算書を添付する必要あり。 ・海外本店の資本金が1億円超等の場合、支店の規模が小さくても、住民税均等割や外形標準課税で税負担が大きい。 ・本支店間の取引について契約書類似の書類を整備しておく必要がある。 |
<メリット> ・海外親会社の資本金が1億円超等の場合、子会社の資本金を低く抑えれば、支店の場合よりも住民税均等割や外形標準課税による負担を小さくすることができる。 ・申告書に海外親会社の決算書を添付する必要なし。 <デメリット> ・海外親会社は別法人のため、送金や取引に際して契約書等の書類を整備する必要がある。 |
5. 届出
支店の設置や子会社の設立の際には、会社の形態に関わらず下記の届出を行います。提出期限に遅れると特例の適用が受けられず不利になる場合がありますので注意が必要です。
届出先 | 届出書名 | 設立時 | 最初の 決算日まで |
備考 |
---|---|---|---|---|
税務署 | 法人設立届出書 (国税) | ○ | 法人設立/支店設置後2ヶ月以内 | |
青色申告の承認申請書 | ○ | 法人設立/支店設置後3ヶ月と最初の決算日のいずれか早い日の前日 | ||
給与支払事務所等の開設届出書 | ○ | 設立後1ヵ月以内 | ||
源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | ○ | 申請を行った翌月分の支払いから適用 従業員10人未満の事業者のみ |
||
申告期限の延長の特例の申請書(国税) | ○ | 延長しない場合は不要 | ||
棚卸資産の評価方法の届出書 | ○ | 最終仕入原価法でよい場合は届出不要 | ||
減価償却資産の償却方法の届出書 | ○ | 定額法(建物・建物付属設備・構築物)・定率法(その他)でよい場合は届出不要 | ||
税務署 | 消費税課税事業者選択届出書 | ○ | 還付が見込まれる場合のみ | |
消費税簡易課税制度の選択届出書 | ○ | 簡易課税の適用を受ける場合のみ | ||
都道府県税事務所 | 法人設立届出書(都道府県) | ○ | ||
申告書の提出期限の延長の承認申請書(同上) | ○ | 延長しない場合は不要 | ||
法人税申告書の提出期限の延長処分等の届出書(同上) | ○ | 延長しない場合は不要 | ||
市町村役場 | 法人設立届出書 (市町村) | ○ |
6. 欠損が出た場合の取扱い
欠損が出た場合には、次の二種類の取扱いがあります。
- 欠損金の繰越控除(平成30年4月1日以後に開始する事業年度に適用)
確定申告書を提出する内国法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度(青色申告書を提出した年に限る)において生じた欠損金額は、各事業年度の所得の金額のから控除することができます。但し、その法人が中小法人*以外の場合には、その控除できる金額は、所得の金額の50/100相当額が限度となります。
なお、欠損金の繰り戻し還付を受けた場合には適用されません。 - 欠損金の繰戻し還付
中小法人*は、青色申告書を提出する事業年度において生じた欠損金があり、その前年度に法人税の納付を行っていた場合には、還付請求書を提出することにより、欠損金の繰戻し還付を受けることができます。
*中小法人: 資本金の額が1億円以下の普通法人(資本金の額が5億円以上の大法人の100%子会社等を除く)
7. 日本の監査制度について
- 開示制度
会社法に基づき設立された会社は、会社法及び会社計算規則等に従った財務諸表(計算書類)を作成し、これを株主、債権者等に開示しなければなりません。さらに証券取引所に上場している会社については、金融商品取引法及び(連結)財務諸表等規則に従った(連結)財務諸表等を作成し、開示する必要があります。
なお、財務諸表を作成する際には、両法とも一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP)に従うことが求められています。 - Japan GAAPとIFRS
日本では法律上の開示制度として、IFRSではなく、基本的に自国の会計基準(Japan GAAP *)に従った財務諸表を作成することが要求されます。しかし、2007年8月に企業会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)は、2005年3月から開始している日本基準と国際財務報告基準(IFRS)のコンバージェンスを加速化することを合意しました。
この合意の結果、両者は、日本基準とIFRSの間の重要な差異について2008年までに解消しました。残りの差異については順次、解消を図ることとされており日本基準の見直し作業が進められております。
なお、2010年3月31日以後に終了する連結会計年度から、特定の要件を満たす上場会社はIFRSによる開示も認められております。
*Japan GAAP
Japan GAAP とは企業会計審議会(金融庁の下部組織)、企業会計基準委員会(財界人、学者、会計士などにより構成される法人)、会計制度委員会(会計士協会)などの諸団体が公表する企業会計基準や実務指針などを指しています。 - 法定監査
公認会計士監査が要求される会社は、通常以下のとおりです。
会社法の規定によるもの:資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社
金融商品取引法の規定によるもの:金融商品取引所に上場している有価証券の発行会社等
また、米国の影響を受け、平成20年4月1日以降に開始する事業年度から上場企業に対し、財務諸表監査の監査人による内部統制監査の制度が導入されています。